起業家向けの「強み発掘」を怪しいと感じる理由は、具体性と顧客視点が欠如しているから。
実際に発掘してもらった私の強みをもとに解説していきます。
おもしろいけれど「使えない」強み
数年前、興味本位で強み発掘をしてもらったことがあります。
その結果、がこちらです。
自分で成功をつかみ取る強みをお持ちです。
年上や、格上、本物が分かる人から選ばれてしまうのも、強みから来るものと思われます。
優秀過ぎるゆえ、場を選ぶ必要がありそうです。
グローバルな視点と広い視野を持って、自分の立ち位置を確認してください。
当時は「なるほど! これが私の強みなのね」とテンションがあがりました。
でも……。
よくよく考えてみると、仕事にどう活かしていいのかわからないんですよね。
心理テストや性格診断としては面白いけれど、起業=ビジネス向けではありませんでした。
なぜならビジネスは、相手がいて初めて成立するから。
仕事で強みを活かすなら、相手が受け取りやすい形にアレンジしないと意味がないのです。
発掘しただけの強みは、たとえるなら収穫したての泥まみれの人参のようなもの。
確かに新鮮で味は良いでしょうが、レストランに来ているお客様に「とれたての人参です! ベータ―カロチン豊富で甘くておいしいですよ」とテーブルにドサッと泥を飛ばしながら置いたら喜ばれるでしょうか?
私だったら即効帰ります。
この人参の強みを活かしたかったら、サラダにする、煮物にする、洗っておすすめレシピを同梱して陳列するなど、相手が「ほしい」と思う形に変えなければなりません。
起業家向けの強み発掘が胡散臭い一因は、相手が不在で常に私、私、私と自分しか見ていないところにあります。
就職・転職の強みと起業界の強みの違い
こちらのグラフをご覧ください。
グーグルトレンドにて、過去5年間の「強み」の検索ボリュームを調べてみました
定期的に検索ニーズが高まっているところがありますが、これは4月。
就職活動を始める大学生が、自己分析のために「強み」について検索していると推察されます。
確かに「強み」と検索すると、就職・転職についてのサイトが多数ヒットします。
もういちどグラフをご覧ください。
下のほうに、赤いグラフもありますよね。
これは「強み」と比較した「強み発掘」の検索ボリュームです。
世間一般では、「強み発掘」がほとんど知られていないことがわかります。
では、就職・転職界の「強み」と、起業界の「強み発掘」は何が違うのか。
複数のサイトを比較してまとめてみました。
転職・就職における強み | どこに勤務しても使いまわせるスキルや経験 仕事で役立つ本人の資質や素養 |
起業家向けの強み発掘 | 努力しなくても自然とできること |
転職・就職における強みはベクトルが企業に、起業家向けの強み発掘はベクトルが自分に向いていることがわかります。
「強み」をアピールして未経験から転職に成功した事例
私は強みをアピールして、32歳、未経験、既婚女性というハンディの中、転職に成功したことがあります。
当時はコールセンターのオペレーター経験しかなかったのですが、ライターへの転身を希望していました。
「電話応対が丁寧です」とか「顧客対応実績は3万件以上です」などと熱弁をふるっても、私を採用するメリットは企業に伝わりません。
そこで、こんな内容を書類や面接で伝えました。
こちらの言い分を一方的に話すだけでは、どんなに対応が丁寧でもカスタマーサービス業としては三流です。
相手に合わせて言葉で情報を伝えるスキルは、御社でも活かすことができます。
電話応対とライティングに共通している言葉で伝えるスキルが「強み」だとアピールして採用され、ライターとして一歩を踏み出すことができました。
もし「単独で行動する肉食系の動物のようで、自分で成功をつかみ取る強み持っています」などと言っていたら間違いなく不採用になり、今こうしてフリーランスのコピーライターとして活動していることもなかったでしょう。
ビジネスの世界での強みとは、「この人と取引をしたらメリットがありそうだ」と相手に思ってもらえるポイントのことを指します。
強みを活かせば不利な状況でも相手に選んでもらえる可能性があると、このときに体感しました。
強みとは自分の過去の経験やスキルの中にあり、見つけるのはそう難しくありません。
だからこそ、脳、ブロック、引き寄せなど複雑に考えず、もっとシンプルにすればいいのにと思っています。
起業で「強み」を活かすには?
就職・転職で強みをアピールするチャンスは、書類選考や面接です。
ではこの2つの共通点は何でしょうか?
答えは、言葉です。
相手に自分の強みを知ってもらうには、言葉にして相手に伝わるようにしなければなりません。
「言葉にできない」が許されるのは、小田和正だけです。
起業で強みを活かす時も同じ。
強みを相手が受け取りやすい言葉に翻訳することで、初めて強みが活きてきます。
たとえば事務職からヨガインストラクターに転身した人なら、こんな風にアピールができるでしょう。
ヨガインストラクター歴やスキルでは、ベテランに劣るかもしれません。
でも元事務職という経歴は、お客様のことを深く理解できるという点では立派な強み。それを伝えつつレッスンを受けるメリットを強調すれば、集客にも結びつきます。
ぜひ人生の棚卸しを行い、事業に使えるスキルや経験を探してみてください。
そしてそれを、「お客様が享受できるメリット」に変換してみてください。
それこそが、起業家にとっての強みです。
自力ではむずかしいときや、時間がないときはご相談ください。
一緒に強みを探し、お客様に伝わる言葉に翻訳していきます。