2022年11月末から1ヶ月間、文章生成AI『Catchy』の有料プランを利用しました。
「AIがライターの仕事を奪う」と言われて久しいですが、相手を知らなければ対策もできないと考えたためです。
結論から申し上げると、私の見解は「あと半年や1年で失業する可能性は低い。でも上手くつき合う方法は考えていったほうがよさそう」です。
※2023年1月の時点での情報です。私のAIの使い方に問題がある可能性もあるので、参考程度にお読みください。
プロモーションを含みます
使いこなすにはスキルが要る
家電にたとえるなら、全自動洗濯機ではなくミシンだと感じました。
全自動洗濯機なら、洗濯物と洗剤を入れればあとは全部やってくれますが、ミシンはそうはいきません。
布に合わせて糸を選んだり縫い目の大きさを調整したり、その前の段階で生地を適切に裁断したりと、技術と経験が要ります。
AIも同様に、「どんな文章を作成したいのか」を使い手が把握して命令を出すことで、初めて狙い通りの文章が生成されます。
一例を挙げると、企業ミッションを生成するには「どんな企業なのか」をAIに伝える必要があります(赤枠内)。
この画像は実際の『Catchy』のものですが、入力例の文章には企業の特徴がコンパクトにまとめられています。
つまり、AIを使う前に業務内容、強み、強調したいポイントなどを把握して言語化しなければならず、「いい感じにウチの会社のミッション書いて」では、機能しないということです。
デザイン業におけるデザインソフトに近いかもしれません。
アドビの『イラストレーター』を使えば高度なデザインが可能ですが、デザインの知識や経験があって初めてポテンシャルを引き出せます。
デザインを何も知らずセンスもない素人が操作方法だけを学んでも「それっぽい」ものが出来上がるだけなのと同様に、「誰に、何を、何のために伝えるのか」という文章の基本を理解していない人がAIを使用しても、狙い通りの文章が生成される可能性は低いのではないでしょうか。
そもそも、生成された文章の良し悪しも判断できないと思います。
キャッチコピーのヒントやアイディアを得られる
いちばん役立ったと感じたのが、キャッチコピーの生成です。どんなキャッチコピーを作りたいのかを入力すると、何通りもの案を出してくれます。
論外レベルのものも多数ありましたが、中には「この発想はなかった!」と思えるものがあり、アレンジして実際にお客様に提案したことがあります。
アディアを広げる、ヒントをもらうという点で、非常に優れていると感じました。
だだしこちらも企業ミッションの生成と同様、どんなことを伝えたいのかを具体的に指示する必要があります(赤枠内)。
SEO記事(ノウハウ記事や解説記事)は実用に耐えるレベル
ノウハウ記事や解説記事(以下、便宜上SEO記事と表記します)は実用に耐えるレベルだと思いますし、実際に現場に導入されていると聞いています。
こちらは「30代の歯列矯正」というテーマでAIに生成させた記事です。
30代で歯列矯正をするメリットとリスクとは?
30代で歯列矯正をすることの概要
このような場合、「歯列矯正」を選択することになります。歯列矯正は、子供の頃に矯正治療を終えられなかった大人や、単に歯並びに関する悩みを抱えている大人にも人気のある選択肢です。歯列矯正には様々な利点があり、患者さんそれぞれのニーズに合わせて行うことができます。しかし、30代で歯列矯正を受ける際には、潜在的なリスクについて知っておくことが重要です。30代で歯列矯正をするメリット
30代で歯列矯正を行う最大のメリットは、選択肢の幅が広がることです。昔は歯列矯正といえば金属のブラケットでしたが、現在は透明なブラケットやセラミックブラケット、見えないアライナーなど、さまざまな選択肢があります。つまり、30代以降の大人は、従来の金属製矯正装置よりも目立たないオプションを選べることが多いのです。また、30代以上の方であれば、短期間で治療が完了する可能性も高くなります。歯列矯正は、一定期間、歯を固定する必要があるため、大人の方は、予約と治療計画を一貫して行うことが重要です。30代の大人は、ライフスタイルや日常生活が確立されていることが多いので、矯正治療を継続しやすくなります。
30代で歯列矯正をすることのリスク
30代で歯列矯正を検討する成人は、治療に伴う潜在的なリスクを理解しておくことが重要です。大人になると、歯の周りの骨は長年安定しているため、歯並びが正しい位置に移動する可能性が非常に低くなります。つまり、歯列矯正は子供の歯並びほど早くは動かないので、治療がより不快になる可能性があるのです。さらに、成人の場合、歯茎の後退や顎の骨の弱化など、既存の懸念事項があり、歯列矯正の治療を複雑にしてしまう可能性があります。30歳で歯列矯正を受ける決断をする
https://note.com/keikowriter/n/ne1f02fbf86a1
30代で歯列矯正を検討する場合、資格のある歯科矯正医に選択肢を相談することが重要です。歯科矯正医は、個々のニーズを評価し、あなたの特定の状況に合わせた提案をすることができます。また、歯列矯正には費用がかかり、成功させるためにはライフスタイルを変える必要があることも知っておくことが重要です。
日本語が不自然ですが、アウトラインの作成には充分ではないでしょうか。
内容の裏づけをとって事例などを追加すれば、SEO記事として成立するレベルです。
内容が信用できないこともある
SEO記事のアウトライン作成は数秒~数分でできるものの、内容の信憑性には疑問が残ります。
とあるキーワード(横文字のビジネス用語)のSEO記事のアウトラインをAIに生成させたところ、まったくの的外れな内容が提案されました。
具体的なキーワードは伏せますが、パイオニア(開拓者・先駆者)の意味について解説するSEO記事が必要なのに、パイオニア株式会社の入社試験を突破するハウツー記事が提案されるイメージです。
他のAI、『ChatGPT』にも作らせてみたところ、「パイオニアとは、日本で使われているビジネス用語で、保守的な人という意味です」と誤情報を流されました。
疑問に思って本国のグーグルで英語で調べたところ、アメリカではそのビジネス用語はほとんど使われていないことが判明。結局、人力100%でSEO記事を書きました。
『Catchy』も『ChatGPT』も米国製なので、日本の事情には疎いのかもしれません。
AIを使用するか否かに関わらず、情報の裏づけをとる重要性を再認識しました。
人の感情を表現するのは苦手
『Catchy』にエッセイを生成させてみましたが、SEO記事風に仕上がりました。
こちらが入力したエッセイのアウトラインです。
「記事のトピックを教えてください」
身長が高いことが長年コンプレックスだったが、バイクの免許を取ってバイクに乗るようになってから、身長が高いことが有利になると気づき、コンプレックスがなくなった。むしろ、身長が高くてよかったと心から思えた。環境を変えれば、コンプレックスが逆に自信になることもあるとわかった。コンプレックスを過度に気にしたり無理に克服するのではなく、コンプレックスをコンプレックスと感じない環境へ移動したほうがいいこともある。コンプレックスは絶対的なものでなく、相対的なものだ。「何について書きたいか、少し教えてください」
https://note.com/keikowriter/n/n2527493a8e72
小学生の時から身長が高いのが嫌だった。球技が苦手なのに、身長が高いからといつもジャンプボールをやらされた。結果、ボールを取れずに文句を言われた。無理やりやらせておいて文句を言うなんて。今の私ならそう言えるけど、当時の私は我慢して耐えるしかなかった。中学生になっても、うどの大木、図体ばかりでかい等と言われ、傷つく。背が低ければこんな気持ちにならずに済んだのにと思った。その気持ちのまま中学と高校時代を終えた。卒業後、おしゃれをしようと思っても、私の身長に合う服は売っていない。またしてもこの身長を呪った。その気持ちはずっと続いたが、26歳でバイクに乗り始めてから一気に変わる。身長のおかげでバイク選びの幅が広がり、安全に運転できる。この身長に感謝した。今はバイクは乗っていないが、身長はもう嫌ではない。コンプレックスは絶対的なものではなく、環境に左右されるとわかったからだ。無理にコンプレックスを克服したりマインドセットを苦労して変えなくてもいい。環境を変えたらアッサリ解決するかもしれない。環境を変えられなくても「環境次第でコンプレックスなんてなくなるかもしれない」と知っているだけで心が軽くなる。
そして、提案された記事がこちら。
意外な自信の発見。二輪免許取得で身長コンプレックスから解放された私
身長コンプレックスに悩んでいる人はいませんか?もしそうなら、あなたは一人ではないことを知っておいてください。この記事では、私が子供の頃から抱えていた身長コンプレックスを克服するまでの道のりを紹介します。そして、バイクの免許を取得したときに、自分でも思ってもみなかった自信を手に入れたことを紹介します。あなたも、この旅を続けるうちに、新たな自信を手に入れることができるはずです。さあ、早く読み始めて、あなた自身の変化の旅を始めましょう。
1.自分の身長コンプレックスを探る
身長にコンプレックスがあることは、よくある問題ですが、それについて語る人はほとんどいません。私は小中高と一番背が低かったので、友達を作るのも、受け入れられていると感じるのも、ずっと苦労してきました。周囲を見ると、劣等感や不安感を抱かずにはいられなかったのです。自分のユニークさや個性を受け入れて初めて、自分自身と自分の身長に折り合いをつけられるようになったのです。大切なのは、自分に対する認識を、強さと勇気のあるものに変えることです。そのためには、自己認識と受容が必要です。自分の身長の限界と、それがもたらす利点を認識することが大切です。私は自分の身長に限界を感じ、悔しい思いをしたことがありますが、その時こそ、他の選択肢を探すきっかけになりました。あきらめるのではなく、前に進むためのモチベーションにしています。
2.二輪免許取得への挑戦
以前は、私のような身長ではバイクのブレーキやハンドルに手が届かず、バイクの免許取得は無理だと思っていました。しかし、調べてみると、低い座席のバイクやステップスルーのモデルなど、さまざまなバイクがあることを知りました。これで可能性が広がり、思い切って免許を取得することにしました。免許を取得するためには、筆記試験と実地試験を受けて、自分の知識と能力を証明しなければならず、大変な作業でした。交通ルールを学び、オートバイの運転に関わる物理的な知識を理解しなければならなかったのです。大変でしたが、絶対に合格して免許を取得しようと思いました。
3.新たな自信を得る
https://note.com/keikowriter/n/n2527493a8e72
努力の甲斐あって、試験に合格し、二輪免許を取得することができました。初めて自分の力でバイクを走らせたとき、自信と達成感に満ち溢れた気持ちになりました。大きな課題に挑戦し、それを克服したのです。もう身長に対するコンプレックスに縛られることはないのだ。私はリスクを取ったのだ。
最後は「もう身長に対するコンプレックスに縛られることはないのだ。私はリスクを取ったのだ」とエッセイ風に締められていますが、入力した心の動きやエピソードはほぼすべてスルーされました。
しかも、「背が高いことがコンプレックスだったけど、バイクに乗り始めてから逆にアドバンテージと思えるようになった」という内容を入力しているのに、「身長が低い私でもバイクに乗れてコンプレックスを克服した」とまったく違う話になっています。
感情を伝える文章にはまだ対応しきれていないのかもしれません。
AI時代にライターが生き残るには?
実際にAIに触ってみて、ライターが生き残るために必要なスキルは次の2つだと感じました。
文章の基本設計スキル
先述したとおり、AIに狙い通りの文章を生成させるには詳細な指示を出す必要があります。「○○についていい感じに書いて」では不十分。ターゲット層、商品や企業の強み、文章の目的などをまずは把握する必要があります。
一般論ではなく個別具体的な事項なので、ここは人力で考えなければなりません。
アナログな取材や情報収集のスキル
現段階のAIは、人が頭の中で考えていること、小さな企業のユニークな取り組み、小学校の学校だよりに書かれた校長先生のメッセージ、地元のマイナーなイベントなどは把握できていないはずです。
人と話したり現場に足を運んだりと、アナログに文章のネタを集めることは今のところ人にしかできないと思います。
つまり、まだ文字化されていない情報を集めて、記事のコンセプトを言語化できるスキルが求められると考えています。
記事作成において、ライティングは氷山の一角です。
2010年前後から、既存の記事を切り貼りするwebライティングが盛んになりましたが、これは見えている氷山だけに着目したもの。今後は海面下の氷山である記事のベースをつくれるか否かでライターの価値が変わってくるのではないでしょうか。
こう考えると、紙媒体が主流だった時代のライターの姿に戻るだけなのかもしれません。
私は紙媒体から入った古い部類のライターですが、現状維持は危険だと思っています。
フィルカメラがデジタルカメラに置き換わったり、デザインの現場にデザインソフトが、設計の現場にCADが導入されたりしたのと同様に、AIを使いこなすことがライターの必須スキルになる時代が来る可能性があるからです。
現段階でもすでに、AIはアイディアを広げたりヒントを得たりするときに役立つツールです。最新の動向を追いながら、上手くつき合う方法を模索していきたいと思います。
※記事内で紹介したAIの文章は、別ブログの『note』から引用しました。
SEO記事のリライト例や、AIに生成させて失敗したエッセイを人力100%で書き直したものなどを紹介しています。
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今回使用した文章生成AI『Catchy』はこちらです。
無料でもある程度使えるので、月額プラン(9800円。2023年2月現在)を解約した後でもたまに利用しています。今後は、必要に応じてスポットで課金していくかもしれません。
ちょっといじる程度でも充分おもしろいので、ぜひ遊び感覚で触ってみてください。無料プランの利用に会員登録は必要ですが、クレジットカードの登録は不要。自動的に課金される心配がないので安心です。
文章生成AIでは納得の行く仕上がりにならなかったときは、言葉のプロにおまかせください。